試験合格に1番必要な能力は、理解力でも記憶力でもなく、アレだ!

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(約3800文字)

今週のお題「試験の思い出」

試験シーズンとのことで、久々にはてなのお題にのってみる。とはいっても、センター試験のことも、医学部2次試験のことも書いたしなぁ。医師国家試験もそういや書いたなぁ。あと書いてない試験、何かあったかな…?

 

と思ったら、パリ大学入学のために京都で受けたTCF-DAPという試験があった。今回はそれについて書こう。それからついでに、パリの大学の学期末の試験のことも思い出したので、それは次回にでも書こう。

 

えぇっと、まず、どうしてパリ大学(パリ第七大学・パリ・ディドロ)で勉強をしようと思い立ったのか。これは、2015年7月末のこと。大阪での学会発表を終えた私は、たまたま近くの会場で、子供のPTSDが専門の白川美也子先生が講演をしておられたので見に行ったのね。そこで、白川先生が、ジャック・ラカンの分析をベースとした子供のプレイセラピーをフランスで学ばれたことを発表しておられたのだけど、その内容に衝撃を受けたのね。ラカンといえば、精神分析をちょっとかじったような人間にはとても魅力的な、難解だけどわかれば(わかった気になれば)面白いと感じる独特の論理展開をする人なのだけど、これ、書物で読む分には面白いけど、実用性があるのかな…?と思っていたので、実際に子供の治療に使われていたとなると、がぜん興味がわくじゃないの!

ということで、猪突猛進型ADHDの肉q先生『そうだ!パリの大学に入って精神分析を学ぼう!』と思い立ったわけ。

 

もちろん、フランスじゃなくても、欧米の他の大学でもある程度高水準の精神分析の授業はあると思う。日本は精神分析はだいぶ前にブームが終わってすたれてしまったので、日本では学ばない方がよいと思うけど。どうしてフランスか?それは1つにはラカンと言えばフランス、精神分析と言えばフランス、ということもあるけど、まぁぶっちゃけ一番の理由は、英語圏の大学は軒並み授業料が高いんだもの。フランスはほぼタダ同然だったからね。

 

じゃあ、肉q先生はそのときすでにフランス語ができたのか? それが、10までの数は数えられても、それより上がわからない…そんなレベルだったわけ。フランスの大学に行こうと思い立ってから、2月に試験を受けるまで、約半年。その間、大学病院で忙しく働く傍ら、隙間時間に試験勉強をして、2月に試験を受け、5月ごろに出願した3校のうち、2校に受かり、パリ第七大学の1年次をスキップで、2年次からの編入が決まった。

 

こう書くと『たった半年の隙間時間の独学で大学入学レベルにフランス語を引き上げることができた肉q先生は、天才じゃなかろうか?』と思う人もおられるかもしれないので言っておくと、私は天才ではない。理解力も記憶力も並外れたものではないと自覚している。実際、私のフランス語の能力は、フランスの大学で授業が受けられるだけの学力など、本当はなかったのである。

 

私が持っていたのは、相応の学力ではなく、実力よりもはるかに上に見せる、いうなればハッタリの能力だった。

 

ようは、フランスの大学で学ぶようなフランス語のレベルなんて全くなかったにもかかわらず、その試験に限っては大学入学レベルのフランス語ができる人のふりをしたという。まぁ、だましたんだね、はやい話が。

 

私は昔からそんな傾向があって、例えば家庭科の成績が万年5段階のうち2の、料理も裁縫も壊滅的だったくせに、好きだった男の子が漫画を貸してくれたお礼に、市販のマドレーヌを買ってきて、包装紙を全部取り替え、レンジでチンして出来たてのていで「初めて作ったから、あまり美味しくないかもしれないけど…」と、健気な手作りをする女の子のふりをしたり…

 

またある時は、当時付き合ってた男の子を初めて自分の家に呼んだときに、事前に何度もリハーサルを繰り返した上で、わざと冷蔵庫を開けてみて、「ありあわせの材料でちゃっちゃと料理をする女の子」のふりをしたりした。まぁこういうのはそのうちすぐばれるんだけどね。

 

 

では、「大学入学レベルのフランス語ができる人のふり」をするにはどうすればいいか。

まず、受験を決めたらすぐに過去問を入手して、徹底的に傾向を調べ、逆にその過去問から外れるものは一切勉強しない。例えば読解問題に、医療系のトピックが毎回出るのなら、医療系の単語は押さえておく。一方で、例えばフランス人なら5歳の子供でも知っているような簡単な単語でも、その試験に出ないならわざわざ覚えない。例えば私は、大学に入学できたときにまだ「靴下」も「フライパン」も「有料」も知らないレベルだった。もちろん、そういった単語だって試験に全く出ないとは言わないけど、出たら周りの文脈から推測すればいいだけだしね。

 

さて、私の受けた試験は、こんな試験だった。

必須試験
テストは解答選択方式80問で実施され、聴解(30問)、語彙・文法(20問)、読解(30問)の3分野で構成されます。試験時間は全体で1時間30分で、聴解が25分、続いて語彙・文法、読解が計65分(受験者が自由に時間を配分できますが、目安は語彙・文法20分・読解45分)です。

 

補足試験(口頭表現・文書作成)
語学力証明を補完するために、いくつかの試験センターでは、基本の必須試験に加えて、2つの表現力のオプション試験を受けることもできます。

口頭表現試験(オプション): 面接官1名と15分間の面談を行います。面談は録音され、必須試験の答案と共に採点者に送られます。
文書作成試験(オプション): 1時間45分の時間内に、6つの課題に答える文章を作成します。課題の難易度は進むにつれて高くなります。

 

この試験、何がエグいかって、たった45分間の読解問題、確か問題数が10だか20だか忘れたけど信じられないくらい多いのね。ネイティブレベルの受験生でも全ての問題を解く時間がないという…でもこれは、考えようによっちゃ有利でもあるのだ。すべての問題を解く時間がないのだから、どの問題を解いてどの問題を捨てるかを決める。私は医学系生物系の問題は解いて、経済系は捨てることにした。捨てるとは言っても、マークシートだから適当にマークはするけどね。

後は、大学受験で培ったテクニックを用いて、問題文だけ読んで、読解内容を推測して解く。大体は問題文と選択肢を読むだけで、内容の推測ができるので、1、2分で長文読解をサクサク終わらせていく。

 

ある衝撃の事実を話そう。その昔、医学部受験生時代、とある難関系の英語の模試を受けたんだけど、私、その模試の順位が全国1位だったのね。めちゃめちゃ驚いたんだけど、なんで驚いたかって言うと、私その模試の長文読解、全くと言っていいほど意味がわからなかったのだ。まったくちんぷんかんぷんだったにもかかわらず、マークシートだったので、問題文と選択肢を見て、「文章の意味は全くわかんないけど、選択肢を作る人の心理としては多分これが正解」という解き方で高得点を取ったわけ。多分その模試、帰国子女の人も受けていただろう。本当の英語力は、私なんざ帰国子女の足元にも及ばない。にもかかわらず、要領が良ければ、こうやって「できる人」のフリができるんだよ!誰も、あの模試で1位をとった人が内容がちんぷんかんぷんだったなんて思いもしないだろうな。

 

さて、話を戻そう。次なる難関が、1時間45分の作文をさせる筆記試験。フランスの大学入試って、鉛筆やシャーペンじゃなくて、ボールペンを使わなきゃいけないんだよ。しかも消せるボールペンは不可。

問題はいろいろあるけど例えば、「お金があればあるほど幸せになれますか?」みたいなものや、鶏小屋にぎゅうぎゅうに入れられた鶏の写真を見せて、それについて思うことを書きなさい、みたいなの。

ご親切にも下書き用紙を配ってくれるんだけど、これが罠でね。この試験、最低これだけ書きなさいという字数指定があって、この指定に従うと、1時間45分では、最初の2、3分で全体の構成を考えて、後は一気に止まらず全力で書き続けるくらいでないと、時間内にその字数に達さないんだ。日本人って几帳面だから、ボールペンで解答用紙を汚くしたくないから、下書き用紙にみんなガリガリと書き出すんだけど、私は言ってあげたかった。「直接解答用紙に書き始めないと間に合わないよ!」って。

試験開始を30分ほど過ぎた頃、おそらく下書き用紙にガリガリと書いていた周りの人たちは、これでは時間が全然足りないと言うことに気づいて愕然としたんだろう。驚くことに、何十人も試験を受けている人達がいたのに、もうガリガリとボールペンを走らせる音がしなくなっていた。

「え?もしかして私しか回答を続けてないんじゃなかろうか…諦めたら試合終了だよ…」

 

そんな過酷な試験だったせいか、受かった大学の学部の同じ学年には、私のほかに日本人はもう1人しかいなかった。彼女も一年次をスキップで2年からなのだけど、彼女は英語圏の帰国子女で、フランス語歴は十数年と長く、すでにアフリカでフランス語を使った仕事をしていたくらい。ハッタリで何とか大学に潜り込んだ私とはえらい違いである。

 

そんなふうに、見せかけの学力で大学に入ったので、入ってから私はそれはそれは苦労したのだけど、それについてはまた次の機会に。

 

今日の動画



ではまた。

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