フランスの大学の試験事情

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(約2600文字)

前回、フランスの大学に入学する際の試験についてちょっと書いたので、ついでにフランスの大学に入った後、試験がどんなものだったのかを書いてみる。よく日本の大学は入るのは大変だけど、入ってからは楽勝で、欧米はその逆と言われている。これは本当にそうで、実際、私がフランスの大学に入学した際には、日本の高校卒業証明書は必要だけど、その他は、フランス語の学力試験しかなかった。ということは、日本と違って、本人が望むなら、数学や物理がたとえ苦手でも、大学の数学科や物理学科に入ることができるということだ。実際、留学生にとっては、理系学科や芸術学科の方が入りやすかったりする。一方で、高度なフランス語能力を駆使しなくてはいけない文学、哲学、心理学系の学部は、求められるフランス語のレベルが高くなる。

 

そして、フランスの大学の場合は、1年次にはわりと大量に学生の入学を許可しておいて、1年次から2年次にかけての進級試験の際に大量に落とす!あまり覚えてないけど、2年次には3割くらいの学生しか残らないとかだったかな…。なので、私が1年次をスキップして2年次からの編入が許されたのは、あまりにラッキーだったとしか言えないのである。

 

しかししかし、その過酷な進級試験に生き残ったいわば精鋭たちとともに2年生になってしまったエセ・パリ大生肉qが苦労したことは想像に難くないでしょ。

まず日本の大学の授業とちがって、あちらの大学では、授業で、あまり黒板もパワポも使わず、先生がただひたすらしゃべっている講義が多い。やばい…まるで聞き取れない!ここでは、おそらくこんなに聞き取れていないのは、私一人だろう。これは、普通の人間の神経では、強烈な劣等感や孤独感で病むことになるだろう。実際、私の1学年下の同じ学科に入った唯一の日本人学生は、日本でも有名な某大学を出ており、高校の時に1年間フランスに留学していたという優秀な人だったが、学校が始まって3週間で病んでしまい、志なかばにして日本に帰国してしまった。私いつも思うんだけど、大切なのは優秀であることでなく、図太さだと思うわ。子供を優秀に育てようとするより、図太い子に育てた方がなんとかなるよ、うん。

 

そんな状況だから、さすがの図太い私も、劣等感にさいなまれたよ。ちょっとはね!でも、よくよく考えたら、授業についていけてなかったのなんて、子供の頃からそうだったし、劣等感に浸っていて得することなんて何もないからね。あたしゃそりゃぁ勉強したよ。私、医学部受験も、医師国家試験も、そんなに頑張った気はしていないのね。試験日の1か月前までバイトしていたくらいだから。でも、パリ大の学期末試験は、医学部受験や国試の10倍くらい勉強したんじゃないかと思うくらい、めちゃめちゃ勉強した。フランスの大学の試験は、日本の大学の試験みたいな過去問が存在しない。先生が毎回同じ問題を出すなんて、ありえない。そして、『ここから出すからね。ここ重要!』みたいなことも言ってくれない。例えば、ある先生は、授業中ダラダラ話して学生に100ページ近くもノートを取らせておきながら、参考文献として、1冊100~200ページ以上の本を10冊ほど上げて、そして、実際の試験には、授業中に一言もふれていなかった、10冊の参考文献のうちのある本に出てきた、とある用語について、最低4ページ書かせるという、まさに鬼畜の所業!

これに対して、学生はノートを共有するグループを作り、これにはほとんどの学生が参加し、『4日の3限の統計学の授業はChloéがノートをとる』みたいに分担する。私はこれが出来る自信がないので、(みんなどこの会社員かってくらいタイピングが早いが、私はフランス語の独特のアクセントのキーボード配列なんか覚えていないし、それ以前に、そんな聞き取り無理!)なので、分担を外してもらう代わりに、自分のICレコーダーを貸し出すということをやっていた。

日本だと試験直前にならないと図書館に人はいなかったけど、フランスは、毎日図書館は満員御礼だった。

フランス人、部活動もしないし、バイトもしないで勉強してる人の方が多いと思う。私もほぼ毎日夜10時まで図書館で勉強した。そして、試験前に、同級生の作成したノートをコピーした。枚数はあまり覚えてないけど、全科目で500枚近くにはならなかったか?これを、無駄を省いて、20枚程度にポイントをまとめたのが、これだ。

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さて、試験だ。多肢選択式は神経内科の1科目のみ。あとはとにかく文章をかかせまくる。

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辞書持ち込み可なんだけど、悠長に辞書を引いているヒマなどない。しかし、スペルミスなどは減点の対象になる。ある留学生は、名前のところに『私は留学生です。スペルミスは大目に見てください』と懇願する1文を添えていたとのこと。その手があったか!でも、これが吉と出るか凶と出るか。解答以外のことを書いてはいけないという説明もあったしね。私はスペルよりも、フランス語というかヨーロッパの言語によくある、単語の性別に従った冠詞をつけないといけないのがネックだった。だって、いちいち『机』が男か女か、『抑圧』が男か女か、覚えてるかっての!しかしいちいち辞書を引いていたら時間がいくらあってもたりない。わからない単語は、とりあえず男性の冠詞をつけておいて、試験が終わる寸前にかたっぱしから辞書を引いて、冠詞を直していくという方法に出た。なぜ、寸前か?試験が終わる寸前は、焦りがあって頭が上手く回らないため、機械的に何も考えずにできる作業をする時間にあてた方がよいのだ。そして、『試験をやめてください』という合図があっても、ボールペンを置かないフランス人(と留学生)笑。みんな必死になって、寸前まで書きなぐっている。私も寸前まで必死になって冠詞を直す。2回目、『試験をやめてください』。まだ、やめない。3回目にやっと係員が『試験をやめないと失格になります』ということではじめて、最後まで粘っていた3割くらいの人間があきらめて、答案用紙を手に、列に並ぶ。そんな試験だからね、みんなあまり成績が良くない。統計学なんて平均点が20点満点中の6点だったかな。最低点が0.5点!10点以上が合格なんだけど、10点以下だったとしても、例えば8点だったとしても、他で12点以上を取っていたら、2つの平均が10点ということで合格にしてもらえる。私もこの救済措置で助かったクチだ。

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フランスの試験については、そんな感じ。

 

今日の動画



ではまた。

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