私がいかにして外国語のリスニングを克服したか語るよ。

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(5000字くらい)

はい、のっけから嘘ついたよ。別に克服はしてない。ごめんご。

今日も語学周辺の話をするね。語学に興味がない人はスルーして下さい。

今日の話は(今日の話も)、皆の為というよりは、自分が語学の勉強の試行錯誤の軌跡を残しておきたいというだけだからあまり役に立たないと思う。

 

先日ブロ友のしまごんさんが、前回の記事(裏ブログ)に対しコメントにて、よく知っているはずの単語なのにネイティブの発音が聞き取れなかったと落ち込まれていたけど、共感しかない!ちなみにしまごんさんは勉強ができる人である。

 

私が外国で勉強したり外国人と関わっていることに対し、絶対音感があるから耳がいいんでしょうと言われたことがあるけど、それはちがう。音感があることでわかることは、せいぜい誰かが何かを話しているときに、「この人、だいたいF~Gの間くらいの高さでしゃべってる」くらいであり、それがわかったところで何の役にも立たない。

 

そもそも私は実は聞き取りがとても苦手である。

以前、スコッチ専門のバーでカウンターのバイトをしていた時、マスターが「今日はクロワッサンが来るから」と言ったので、てっきりクロワッサンと言う名のパン屋さんでも来ると思って待っていたのに結局来なかったので、マスターに「パン屋さん、来ませんでしたね」と言って不思議な顔をされた。来店されたのは、黒沢さんであった。

またある時は、NYにあるピアノバー(日本のクラブ)のカウンターで働いていた時、電話が鳴り、出ると「上井さんいませんか?」と言うので、探したけどいないので、「上井さんという方はいらっしゃらないですが」と返した。実は「ウエイター要りませんか?」という求人の申し込みの人であった。

 

そんな感じのエピソードは枚挙にいとまがない。しかも、私は視覚優位型の発達障害であるため、長い文章を頭にとどめておくのが難しく、すぐに空想の世界にGOTOしてしまう。そんなわけで、長電話を楽しむことが出来ず、すぐに「なんか用?」とうっかり言ってしまっては、「電話をすると不機嫌な人」「なんか知らんが怒らせた?」と人々に誤解を与えていたようだ。その節はすみません。

 

そんな私が、6年くらい前にひょんなことから「フランスで精神分析を学ぼう!」と思いついた。といってもそれまでずっとフランス語の勉強をしていたのではなく、大学の教養課程で1年程度、1週間に1時間程度の授業を受けた程度だったので、渡仏を思いついた時点では、かろうじてフランス語の数字が20まで数えられるかどうか程度のフランス語力であった。

それが、くそ忙しい大学病院の仕事をこなしながら隙間時間に勉強をして半年後に試験を受けて、パリ第7大学(今は統合してパリ大学だっけ?)の2年次から飛び級で入学を果たした。3つ名前を書いた大学3つとも受かったと聞けば、天才か!?って思うやん? 実際とてもとても学歴の高い先生方にも天才呼ばわりされた。

 

が、こっから先を読んでくれれば、私が天才でなく、なんだただの詐欺師か、とわかってもらえると思う。

これは、マークシート式の試験だからできたことである。

ちょっと前に、我が甥っ子からLINEが来た。リスニングが出来ないとのこと。

共通試験までほんの数日しかないので、私は「リスニング上達法」ではなく、とりあえずの応急処置的に点をとる方法を教えた。それが下の内容である。

 

リスニング対策

 


①試験用の教材やレベルの同じ位のラジオ英語等を使って5W1Hを(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)をひたすらメモする。

 


②本番の形式の英文の特徴を押さえておく。

 


例えば、最近はここまで簡単じゃないかもしれないけど、長文のリスニング問題は単純化すると大体次の形式になっていることが多い。

 


明日図書館に一緒に行こうよ。

あいにく明日は火曜日だから歯医者に行かなきゃいけないんだ。

じゃああさってはどう?

それならいいよ。

 


選択肢

質問:明と太郎の予定について正しくものを選べ。

 


A. 明と太郎は火曜日に図書館に行く。

B. 明はあさって歯医者に行く。

C.2人は水曜日に図書館に行く。

 


例えば他の例では、

 


ゆみとあやは、映画を見に行く約束をした。でもその日映画館は閉まっていた。なので、映画の代わりにカフェでおしゃべりをした。

 

 

 

このように、大抵最初の文章に出てくる情報は、選択肢にハッタリとして使われる。必ずと言っていいほど、答えの選択肢は、もっと後の情報についてのもの。

これは最初に聞こえてきた単語に飛びつく人をふるい落とすためにある。火曜日、図書館、歯医者…のように単語しか聞こえない人は引っかかる。答えの選択肢は、あえて「あさって」を「水曜日」と文中で使われてない単語に言い換えたりしてる。

 


なので、もし全然聞き取れなかったら、

・最初に出てきた情報の単語が入っている選択肢は避ける。

・文章中出てこなかった、「言い換え」っぽい文章を選ぶ。

 

 

 

そんな感じで、最近の傾向を分析すれば、万一全く聞き取れなかったとしても正当率を上げることができる。

 

ご理解頂けただろうか。そう、これは心理学的なアプローチで、下手したらほとんど聞き取れてなくても点が取れるという方法である。私のフランス語の試験もそう。その時点ではおそらく他の受験生よりもフランス語能力は足りていないにも関わらず、心理戦で点数を取ったという。ま、詐欺なんだよね。とりあえずできるふりをして、後から実力が追い付けばいいかと思って。だから大学入ってから困ったのなんのって。「フライパン」や「靴下」といった日常単語も知らないで、先にDes zones érogène(性感帯)という単語を覚えるといういびつなフランス語の知識を持ってしまったよ。余談であるが上の単語は授業で出てきた単語である。精神分析という学問では、私は試験で3回もpenisという単語を試験用紙に書くという得難い体験をした。

 

さて、とりあえず手っ取り早く受かるためには、正攻法なんて時間がいくらあっても足りない。詐欺的でもなんでもうかりゃいいんだ。でもその先は? 試験の為でなく、本格的に聞き取りが出来るようになるにはどうすればよいか。ひたすら数こなして聞けばある程度まではできるようになるけど、なかなかそれ以上できる気がしない…とスランプに陥ってしまった時に、何をやればそこから抜け出せるか、私がやっていてなんとなく手ごたえがありそうなやり方を書いておく。

 

まず、リスニング能力のレベルごとにすべきことを挙げる。

レベル1.ほとんど聞き取れないレベル。

レベル2. だいたい何の単語を言ってるかは聞き取れるけど、早すぎて文章としては理解できないレベル。

レベル3.語学の先生やニュースなど、お行儀よい話し方だとなんとか聞き取れるが、ネイティブのおしゃべりや映画などの会話だとお手上げ。

 

レベル1は、しまごんさんが「gospel」をネイティブが「ゴスペル」でなく「ガスポー」と発音していて、知らない単語に思えたというように、我々中年から上の人々は、学校のあまりうまくない先生の発音を聞いて育っているため、そのへんに悪しき病巣がありそうだ。それを洗い流す必要がある。やや簡単めのリスニング教材を速度0.75倍くらいにして、音声を聴きながら同じことの書いてある文章をひたすら読むべし。

 

レベル2は、例えば村上春樹の小説の外国語版など比較的読みやすいものを選び、1倍速以上の速さでAudibleなどを利用し、聴きながら読んで意味をつかむ。多少知らない単語があってもほったらかすのがいいけど、もし1ページに10個以上知らない単語があると、わからなすぎてストレスになるからもうちょっと教材のレベルを下げる。実際の会話スピードはAudibleの1倍速よりも速いので、徐々にスピードを上げて1.2倍速くらいで聴きながら速読できるようにする。実際の会話では、わからない単語にこだわったらそこから先が聞き取れなくなるので、3500字くらいの単語知識があるのなら、辞書なしで速読するのみ。

 

レベル3. このレベルまでくると、ニュースなどはだいたい聞き取れるが、ネイティブの自然で速いやり取りなどになると、やはりお手上げといったところ。なぜそうなるかといえば、スラングなどなじみのない言葉があることも原因ではあるが、ふだんからよく口にするような言葉やフレーズは、次第にこなれてきてネイティブ同士でないと聞き取れない代物に変化していくことも大きいだろう。例えば「というか→ていうか→てゆーか→てか→つか」これは日本人なら聞き取れる。「あざーす」然り。

 

そこで私は今、『とっさの一言・フランス語版』でフレーズを毎日暗記していっている。フレーズと言えば、大学受験生時代に構文、イディオムの類はやった人も多いと思うけど、この「とっさの一言」は「はっきりいったらどう?」とか「頭おかしいんじゃない?」とか、試験に出そうにない生々しい臨場感にあふれている。これを1日2,3ページくらいずつ覚えて、翌日復習してと繰り返しながら進み、5回覚えていたらokという感じで800ページほどの分厚い会話集を必要そうなところから覚えていっている。これをやりだしたのはほんの数か月までだけど、やりだしてから飛躍的に聞き取りが上達したことを実感する。今、フランス語音声でハイジと赤毛のアンを見てるんだけど、めっちゃ出てくるのよこのフレーズ集で覚えたフレーズが!これね、うれしいよ。勉強したことがダイレクトに返ってきて。

 

あとね、フレーズ集で聞き取りが楽になった原因がわかった。

しまごんさんが例に出したgospelのように、私はフランス語のgouvernement(政府)はスペルがこんなに英語と似てるのに、発音がグベルネモンだったことで、なかなか「ガバメント,政府」という言葉までたどり着けなかったという悔しい記憶がある。しかし、このグベルネモンはその後1度も聞き取れないということはなかった。一方で聞き取りにくい単語も数多く存在する。その聞き取れない単語には共通点があった。rやvなど、日本語にない発音を含むものというわけではない。Gouvernementはそれらの発音を含みながらも以後聞き取れないことがなかったからだ。

 

わかった方も多いかと思うが、その聞き取れない単語の共通点とは、短い単語であるということだ。例えばrueリュ(通り)という短いフランス語はそれ単独では聞き取りづらいが、dans la rue(通りで)という連語にすれば、ドンラリュは聞き取りやすいのだ。連語は、その1部が聞き取れなくて、ンラリュと聞こえたとしても、その切れ端と文章の流れで、ドンラリュといっていたことが予測できる。そして、rueという単語は私の感覚的には8割がたはdans la rueとして使われている。それなら、短い単語はなるべくひっつけて、長い単語状にして覚えた方が聞き取りやすくなる。

 

連語にした方が一部聞き取れなくても前後から予測できるというほかに、連語にはまだメリットがある。テンポの速い会話をいちいち訳しながら聞いていたらとてもじゃないけどついていけない。どうすりゃいいかって、訳さなけりゃいいんだ。

 

このフレーズ集に、Ça ne sert à rien de trainer au lit!(ベッドでぐずぐずしててもしょうがないでしょ!)みたいな、なかなか起きない子供をたしなめる表現があるんだけど、以前映画で「泣いててもしょうがないでしょ!」がすっと入ってきたのは、この「~してもしょうがないでしょ」にあたる「サンセラリアン」をひとかたまりの単語みたいに覚えていたからだなぁと思った。

 

まとめ

・とりあえず試験に間に合うことが目的だったら、心理学的(詐欺的)に点を取る。

・リスニングは、段階的に戦略を変える。

・文章の速読が出来なかったら、普通の速度のリスニングはできない。まず文章の速読を!

・短い単語は聞き取りにくいから、連語で「長い単語化」する。

・会話文を「訳そう」とすると、速さについていけず取り残されるから、定番フレーズを頭に入れておき、1から訳そうとせず、くみあわせる。

 

まだまだ語学迷走の旅は続く…

 

ではまた。

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