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寒くなりだしてから、新型コロナ感染が再拡大してるということで、再び世間が、経済を取るか安全を取るかなどとかまびすしい。私はこれらの論争に参加するのは疲れるので、距離を置いておきたいという気持ちがあるのだけど、とりあえず今の時点で自分が考えていることを記録として残しておく。
新型コロナに関しては、信頼のおける北品川藤クリニックの石原先生のブログで学ばせて頂いている。このブログでは、今日はWHOによる新型コロナウイルス感染症のガイドライン最新版について紹介されていた。ただ、これについては特に目新しい知見はなかった。主に治療法についての記事であるので、ここではふれないが、興味のある方は一読されるといい。
新型コロナは新型なだけあって、当初はどう行動するのが正しいのか、感染症科も呼吸器内科も免疫学の先生たちもみな混乱していた。私など、いわずもがなである。ただ、あれから10か月ほどの月日のうちに各国で膨大な数の研究が行われたため、わかってきたことも少なからずある。
新型コロナウイルス感染症のウイルス拡散期間(メタ解析):北品川藤クリニック院長のブログ:SSブログ
つまり、ウイルスの遺伝子自体は、
感染後非常に長期間検出されるのですが、
ウイルスの増殖は症状出現後9日以降は検出されず、
そのため感染者からの二次感染の可能性は、
それ以降は成立しないと考えて、
大きな問題はないのです。
(中略)
新型コロナウイルのRT-PCR検査の陽性は、
症状のある時点での病気の診断のためには有用ですが、
周囲への感染可能性の指標には全くならず、
陰性になるまで隔離を強要したり、
検査を繰り返すことには科学的意味がないばかりか、
感染者の不安を煽り、周囲の差別感情を惹起する、
という点でむしろ有害です。
現状有症状の場合には、
症状出現後10日以降で無症状であれば、
基本的に周囲への感染リスクはないと、
そう考えて大きな問題はなさそうです。
新型コロナウイルス感染症の患者との接触と感染リスク(シンガポールの疫学データ):北品川藤クリニック院長のブログ:SSブログ
要するに、
30分を超える会話は、
たとえマスクをしていてもしない方が良く、
タクシーに乗り合わせるようなことはするべきではなく、
家族は同じ部屋で寝るのは不可ですが、
気をつけていれば食事や洗面、
トイレのリスクはそこまでではなく、
接触感染にはそこまで神経質になることはなさそうだ、
という辺りが現時点での結論に、
上記データからはなるようです。
私がこの先生のブログを愛読するのは、楽して質の高い情報を得ることが出来るからだ。信頼性の高い論文は、必ずしもランセットやニューイングランドジャーナルといった一流の論文雑誌に掲載されているということではなく、だいたいがRCTやメタアナリシス、最低でもコホートスタディといった手堅い手法を使った論文ということだ。
これは例えば、ある人が「なんちゃらしいたけで難治性のがんが消えた!」という論文を書いたところで、それが本当だとしても、たった一人のケースリポートであれば、これは信頼性が低い。
テレビで専門家がコメントをしている情報も、単に自分の経験などから話しているだけなら、それも信頼性が低い。
大人数に参加してもらったり、長い年月追跡調査したり、調べたいこと以外の条件が偏らないようにランダムに2つのグループに割り付けたり、プラセボの要素が入らないよう、参加者にどちらの薬を使うか知らせなかったり、医師自身もどちらの患者さんにどの薬を使ったかをわからないようにしたり、そうやってできた論文をまとめてさらに精度の高い論文にしたり、…こうして論文の信頼性の高さが決まってくる。
さて、この2つの記事からわかることは、発症後10日以降の無症候者はたとえPCR陽性であっても周囲への感染リスクは基本的に少ないこと。(ただしこの記事では言及されていないが発症直前の陽性者は無症候でも感染力はある。)
感染リスクのある行為は、主に閉じた空間である程度の時間飛沫が届く距離で話したりすることであるが、接触感染による感染リスクはさほど高くないということ。
確かに、以前は危険視していたパチンコ屋ではクラスターが発生せず、満員電車も意外と問題なし。一方で、海外の事例も含めて、教会や飲み会、合唱の練習でクラスターが発生することから、警戒すべきは、歌ったり、長時間つばをとばしておしゃべりしながら会食したりといったことになるだろう。
このように考えると、一人で外で公園を散歩したり、ジョギングやランニングをするのはなんら問題にもならない。むしろした方がよいとすら私は思っている。マスクをする必要もない。
まだ新型コロナの正体が今よりもわからなかった頃は、私も、なるべくリスクの高い高齢者は家にこもっていた方がよいと思っていた。
今でも、新型コロナを「ただの風邪」とは思っていない。亡くなった人の数こそ日本では少ないが、生きている人でコロナから生還した少なくない数の人が後遺症を感じている。個人的には、サイトカインストーム症候群とでも名付けたくなる、ちょっと別物という実感がある。
それでも、高齢者が家にこもることにもまたリスクがある。
最近私は、スマホで万歩計を付けだしたのだけど、それをみて衝撃を受けた。平日は、食後にウォーキングをするので、だいたい1万歩歩いているが、家から1歩も出なかった日曜には182歩しか歩いていなかった。
高齢者が長期間家にこもると何が起こるか。
運動不足や肥満はもちろんのこと、ずっと同じ体勢で横になったままTVを見続けたりして、いつのまにか足に血栓ができ、肺塞栓になるかもしれない。太陽に当たらないことで、体内でビタミンDの合成ができず骨粗しょう症になったり、体内時計が狂い、不眠からうつになったり、刺激のない生活から認知症になったりと、ろくなことがない。コロナを恐れて家にこもることによって他の病気にかかるんじゃ、本末転倒だ。大いに散歩に出かけ、あまり込み合わない時間にケーキ屋でおいしいケーキでもテイクアウトして、人生を楽しめばいいじゃないか。
GOTOトラベルについて、どう思うか。
医師会は批判していたけど、私はGOTOトラベル自体がすべて悪いとは思っていない。
もともとこうした感染症の特性上、気温が下がり外気が乾燥すれば、流行しやすくなるのであり、GOTOのせいとばかりも言えない。
私が恐れているのは、感染症の流行拡大よりもむしろ経済悪化による自殺者の増加だ。実際、この10月だけで自殺者の数は新型コロナ感染症の累計死者数を超えている。
最近外来受診した患者さんが、解雇されたと告げた。すでに弱者は続々と首を切られている印象だ。私たちはやみくもに怖がるのでなく、お金に余裕のあるものは、感染リスクの比較的少ない方法で経済活動を続けていくといいと思う。
しかし、EATにはやっぱりリスクが伴うと思うんだな。どうしてもマスク外してゴハン食べながら、ある程度長い時間おしゃべりをしてしまうから。
だから、私が勧めるのは次の2点。
①GOTO テイクアウト
②GOTO おひとり様。
ふだんは1人で温泉宿に泊まろうものなら、「自殺されるかも!」と嫌がられるおひとり様であるが、今こそおひとり様歓迎!私の同志たちよ、一人で黙々と温泉に行こう。
GOTOイートも、おひとり様なら、黙々と食べ、食べたらさっさと出るから回転早い。ディズニーランドもおひとり様のみ!みんな誰ともしゃべらない、黙々と淡々とアトラクションを回るおひとり様たち…シュールだ。
というわけで、おひとり様の私は、来週から1週間ほど小倉に行ってくるよ。といっても、旅行ではなく、産業医の資格を取るため、一日中講習・実習の日々である。せめて温泉でも入らないとやってられない!と思ったが、ないじゃないか、温泉。おい小倉!
と思ったら、同僚の女医さんが見つけてくれた温泉がこちら…
おあとがよろしいようで。
ではまた。